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第1位:ゴッドファーザー

ドラマ・犯罪・マフィア

The Godfather

  • 監督:フランシス・フォード・コッポラ(カンバセーション盗聴、地獄の黙示録)
  • 脚本:マリオ・プーゾ(スーパーマン)
  •    フランシス・フォード・コッポラ
  • 原作:マリオ・プーゾ
  • 出演:マーロン・ブランド(欲望という名の電車、波止場)
  •    ジェームズ・カーン(熱い賭け、ファニー・レディ)
  •    ジョン・カザール(狼たちの午後、ディア・ハンター)
  •    ロバート・デュバル(地獄の黙示録、テンダー・マーシー)
  •    アル・パチーノ(セルピコ、狼たちの午後、セント・オブ・ウーマン)
  •    タリア・シャイア(ロッキー)
  • 1972年/米/175分

これが僕の家族だ


 ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)通称ドン・コルレオーネは、いつも執務室で多くの友人や名付け子たちの陳情を聞いている。今日は愛娘コニー(タリア・シャイア)の一世一代の結婚パーティーの日、そんな日に久々に現れた葬儀屋のボナセーラは、自分の娘を強姦し大けがを負わせた男どもを殺してほしいとドンに頼む。ドンの妻がその娘の名付け親(ゴッドマザー)だったのだが、ボナセーラはマフィアに借りを作りたくないという理由から、これまでドンを敬遠してきた。今更虫のいい話だ。金ならいくらでも払いますと言って泣きつくが、ドンは金で動くような人間じゃない。むしろ金の話をされるのが最も嫌いなタイプだ。ここは資本主義経済大国アメリカだが、自分たちはイタリア式でいこう。友としての忠誠を誓い、ゴッドファーザーと呼んでくれれば金なんていらない、君の頼みを聞いてやろう。そしていずれは私が君に何か頼み事をするだろう。それだけ覚えておいてくれればいい。ただ君の娘は死んでない。クレメンザを手配しよう。あいつなら暴力をやり過ぎない。頼まれたからとはいえ、コルレオーネファミリーは人殺し集団じゃないんだから。


 庭ではコニーの結婚披露パーティーが盛大に開かれている。ニューヨーク五大ファミリーの中でも最大の勢力を誇るというマフィアのドン・コルレオーネ家のパーティーだ。そこにはマフィア関係者はもちろん、古くから家族ぐるみの付き合いをするイタリア系アメリカ人たちや、懇意にしている政治家、著名人なども集まっている。門の外にはFBIや新聞記者たちが群がっている。パパラッチどものフィルムを奪い、カメラを壊して回った長男のソニー(ジェームズ・カーン)は、見ての通り血の気が荒い男だが、その後パーティー中だというのに妻の目を盗んで愛人としけ込んだりもする。一方ドンは妻と仲睦まじい姿も見せるが、相談役のトム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル)と共に度々執務室に戻っては、彼をゴッドファーザーと呼ぶ者たちの陳情を聞く。外では白昼の下たくさんの参列者や子供たちが楽しそうにはしゃぐ、その姿はまさに一族の繁栄を意味し、それと同時進行に薄暗い執務室ではファミリービジネスが粛々と行われている。これがコルレオーネファミリーなのである。

 遅れて三男のマイケル(アル・パチーノ)は可愛い彼女ケイ(ダイアン・キートン)を連れ、アメリカ海兵隊の軍服姿で現れた。マフィア稼業とは全く関係ないところに身を置く堅気の二人だ。ド派手なパーティーに戸惑うケイに、マイケルは少しずつ家族のことを紹介する。

まずは兄のトム・ヘイゲン。兄といっても名字が違うのは、トムは長男のソニーが昔連れてきた家なし子で、それ以来家族として暮らしている義兄だ。シチリア系ファミリーの中ではただ一人ドイツ系だけど、今ではファミリーのコンシリアリで優秀な弁護士だ。

ほろ酔い気分で突然ケイの手を握って来た男、これは次男のフレド(ジョン・カザール)。女好きで頼りないが、気さくで社交的な男だ。

そして、あそこでさっきから一人でブツブツ言ってる怖い顔のおっさんは、パパに永遠の忠誠を誓って手伝っているルカ。

ハリウッドの人気歌手にして俳優のジョニー・フォンテーンが会場に現れた時は、「彼も知り合いなの!?」と驚くケイに、パパはジョニーのゴッドファーザーなんだと説明し、ジョニーとルカとパパの過去のエピソードを語る。暴力によってジョニーが守られた、というような話を。

 「それが僕の家族さ。」

 ちなみに「ゴッドファーザー」とは「名付け親」と訳されているが、正確にはキリスト教の洗礼式での代理父・後見人のこと。イタリア人にとっては名付け親と子の関係は生涯続く何にも勝る繋がりなんだそうだ。本来「マフィアのボス」などという意味はないが、ドン・コルレオーネは多くの名付け子を持つ一族のボスとして君臨しているということは間違いない。

 そしてまた今日、ドンはジョニーの泣き言を聞く。映画プロデューサーがジョニーを嫌い、主演をくれないのだという。そんな弱気なジョニーを𠮟りつつも、心配するな大丈夫だと励ますドン。ゴッドファーザーも大変だ。ジョニーを部屋から出した後、「はぁ」と短いため息をつき、またパーティーに戻っていくのだった。(この後、トラウマレベルの馬の首は、記念すべきシリーズ初の殺戮シーンとなる。)

 家族みんなで記念写真を撮った後、花嫁とダンスを踊るドン。優しいパパだ。思えばこの瞬間がヴィトー・コルレオーネの人生において、そして映画「ゴッドファーザーシリーズ」においても最も幸せな瞬間だったのではないだろうか。どこで狂ったか、この後のコルレオーネファミリーは、いばらの道を突き進み、繁栄と衰退を見せることになるのである。決して順風満帆なことばかりではなかったが、それまで堅気だった三男のマイケルをも巻き込み、それぞれの人生が大きく揺れ動いてゆく。駆け引き、裏切り、別れ、孤独・・・。絶望の物語はここから始まる。


 ドンを頼って麻薬密売人ソロッツォがやって来た。ここニューヨークで新たに麻薬ビジネスを始めようとしているという。バックにはタッタリアファミリーが付いているらしい。何か怪しい。
 ソロッツォはドンに敬意を払い、広い交友関係も評価している。ソロッツォの提示する金の取り分も申し分なく、条件は悪くない。「なぜそんな美味しい話を?」と聞くと、「あなたは100万の現ナマを動かせるから」。やはり金か。ドンの顔色が変わる。「私が麻薬に手を出したら、政治家の友達が離れていく。麻薬は薄汚い」として断るが、意に反してソニーは乗り気な姿勢を見せてしまう。「待て、口をはさむな」とソニーを制し、ソロッツォのビジネスを否定することなく、対立は避けたいとして握手を交わし、会合を終える。

「ソニー、人前で二度と勝手な事を言うな。」

 時はクリスマス。マイケルとケイは家族へのプレゼントを抱え、クリスマスムードの街を歩く姿は幸せそうだ。

一方、ドンの命令でタッタリアのアジトに単身で出向いた武闘派ルカは、そこでソロッツォとタッタリアによって絞殺されてしまう。ルカは誰よりもドンに忠誠を誓ったファミリーの兵隊だ。

トムがソロッツォに連れて行かれる。

運転手兼護衛のポーリは風邪をひいたと言って、代わりにフレドがドンの車を運転する。

この時すでに何かが怪しく動き始めていた。

 フレドの運転で出かけたドンは、途中果物を買いに八百屋に立ち寄る。オレンジやピーマンを選ぶ姿は少し無防備が過ぎたか、あっという間に二人の殺し屋によって銃撃されてしまう。何発もぶち込まれ、即死をも免れない状況だ。ポーリがいないので側にいるのはフレドだけだ。情けないフレドは慌てて銃を構えようとするが手を滑らせアタフタするばかり、何も出来ないまま敵を逃してしまった。「パパ!パパ!」と泣き叫ぶしか出来ないフレドを通行人が取り囲む。ニューヨークを取り仕切るマフィアの構成員にはおおよそ見えないフレドの嗚咽が街中に響くばかりだった。

大丈夫だよ、僕がついてる


 病院に運ばれたドンは一命をとりとめたが、まったく油断できない状況だ。残されたファミリーとマイケルは今後のことを話し合う。トムはソロッツォから、ソニーと手を組みたいと持ち掛けられていた。元々トムは麻薬が将来を支配すると考えていたし、ソニーもヤクは金になると期待している。もしもこのままドンが死んだら、ソロッツォと手を組むしかない。どちらにせよ、この件に堅気のマイケルは巻き込まない方がいい。

 この後ポーリが、ドンをソロッツォたちに売ったとして、粛清される。

 マイケルがパパの見舞いに行く。一人で行こうとするが、ソニーが心配して護衛をつける。今はそれほど危険な戦況下だ。なのに病院に着くとそこには、警備員も見張り役も誰もいない。看護師に聞くと、警察が来て帰してしまったと言う。
これはただ事ではない。ソロッツォたちが再び、まだ目を覚まさないパパの命を狙いにやって来る。そう確信したマイケルは、看護師に協力してもらい、パパのベッドを別の部屋へ移した。

 パン屋のエンツォが見舞いにやって来た。シチリアからの不法移民だった彼は、パパに陳情を聞いてもらってニューヨークに住めるようにしてもらった恩義があった。マイケルが、ここは危ないから帰れ、と言っても、あなたのお父さんの役に立ちたいんだと強く訴える。その声が聞こえたのか、パパが目を覚ました。マイケルに見守れながら微笑み涙を流すパパは、いつになく弱弱しかった。

 「大丈夫だよ、僕が付いてる。」

パパのことは自分が守る。親子の絆が強く確認された瞬間、そしてマイケルが覚悟を決めた瞬間だった。

 パン屋のエンツォを病院の玄関に立たせ、ポケットに手を入れて銃のある振りをさせ、二人で護衛の振りをした。すると案の定タッタリアの手下の車が通るが、二人の姿を見て立ち去っていった。堅気の二人が殺し屋を追い払ったのだ。エンツォは震えが止まらない。そこに警察が現れて、自分の仕事の邪魔をされたと腹を立て、マイケルを思いっきり殴った。ソロッツォが警官を用心棒として雇っている事が分かった。

 病院襲撃はマイケルによって未遂に終わったが、ソニーが報復としてタッタリアの息子を殺してしまう。もはや全面抗争は免れないという中、ソロッツォがマイケルを指名して話し合いを求めてるという。殴られて腫れたマイケルの顔を見て、ソニーはますます戦闘モードだ。ソロッツォを殺すしかないと言うソニーと、話し合いは必要だと主張するトムは言い争う。警官に守られているソロッツォは殺せない。警官を殺すことも出来ない。そんなことをしたら政治家だって自分たちから逃げていく。我々は負けだ。トムはもうお手上げ状態、ソロッツォとの手打ちを考え、ソニーを説得しようとする。

すると兄たちの激しい口論を静かに聞いていたマイケルが「僕が二人を殺す。」と言い出した。ソロッツォとの話し合いには僕を殴った警官もいるだろう。その時がチャンスだ。殺しの計画を冷静に語るマイケルを、一同は「大学出がか?」と笑うが、兄たちは忘れているのだろうか。アメリカが真珠湾攻撃を受けたとき、この三男坊は家族の反対を押し切り、大学を中退して海軍に入り、第二次世界大戦で活躍した男だということを。その本質には「やられたらやり返す」という強い闘志が渦巻いているのだ。マイケルはあくまでも冷静だった。

「マイケル、お前はみんなの誇りだ」。兄弟たちに見送られたマイケルは、冷静さと闘志を秘めて待ち合わせの場所に行く。

迎えの車に乗り込むと、ソロッツォとあの警官がそろって乗っていた。車内での二人は「お互い腹を割って話そう、二度と手は出さない」「ソニーもいい奴だ、こないだは悪かったな、俺も年を取りすぎた」などと意外にも友好的だ。この後二人の脳みそを銃でぶちまけるイメージトレーニングをしてきたマイケルは、少し複雑な心境だ。

小さなイタリアンレストランに着いた。ソロッツォとマイケルはイタリア語でビジネスの話を始める。イタリア語が分からない警官はさっそくおすすめのメニュー、子牛のステーキを美味そうに食べている。彼は食事をしに来た、ただのソロッツォのボディーガードにすぎない。

話は率直だった。ソロッツォはまずドン襲撃を詫び、平和的に休戦協定を結びたいと希望する。マイケルにとっては詫びなどどうでもよく「とにかく二度と親父に手を出さないという保証」が欲しかったのだが、ソロッツォにそんな保証は出来ない。彼自身命を狙われている身なのだから。

マイケルは悟った。平和協定なんてありえない。また、この二人を殺したところでパパの命が救われる保証もない。もっと根っこから叩いていかないと意味がない。クレメンザも言ってた。「頭をつぶした方がいい、放っておけば必ずのさばってくる」と。まずはこの二人、そして更にトップを叩き潰さなければ。

計画どおりトイレに立つと、事前にクレメンザが隠しておくことになっていた銃を探す。一瞬、あれ?もしかして無い?と思わせる間があったが、ちゃんと隠されていた。もしクレメンザが裏切っていたら、と考えると……。彼がファミリーを裏切ることは今後一切ない、という表れのようにも取れるシーンだったように思う。

トイレから出ると、ソロッツォの額に一発、警官には二発お見舞いして、イメトレどおり立ち去るマイケル。誰一人悲鳴すら上げない静かな現場には、轟く銃声の余韻と薬きょうのにおいだけが残った。

平和協定


 レストランで起こった凄惨な殺人事件は、コルレオーネの息が掛かった新聞記者によって、麻薬密売人と悪徳警官の黒い関係としてスキャンダラスに報道された。続いてニューヨークマフィアたちの抗争は3か月に及び激化していた。

 ドンの退院パーティーは一族が集まったが、その中にマイケルはいない。マイケルがソロッツォたちを銃殺した後、今は安全な場所に隠れている事を聞かされたドンは、堅気の三男を巻き込んでしまった事に心を痛める。マイケルはドンの退院を待たずに、シチリア島へ高飛びしたのだった。

 コルレオーネファミリーはソニーを中心に少しずつ新しい体制となっていった。直情型のソニーと冷静沈着なトムはしばしば口論になり、ソニーはトムがシチリアの熱い血を持たないことを責める。ドンが不在だと、家族の言い争いも絶えない。

 マイケルはソロッツォ殺しのほとぼりが冷めるまで、ドンの生まれ故郷コルレオーネ村で息をひそめ、のんびり過ごした。そこでアポロニアというギリシャ風の美女に一目惚れし結婚する。ここでは、あの有名な「ゴッドファーザー愛のテーマ」が繰り返し使われ、異国に流れ静かに暮らすマイケルの心情を哀愁たっぷりに演出している。以降このテーマ曲は、コルレオーネ村とアポロニアの象徴として、シリーズを通して流れることになる。

 一方ニューヨークでは、コニーとカルロが激しい夫婦喧嘩を繰り返す。カルロが浮気し、コニーが荒れる。ベルトで叩き、お前の家は皆人殺しだとコニーを煽るカルロ。コニーから電話を受けたソニーは案の定ものすごい剣幕で、コニーを助けに単独で車を走らせると、高速道路の料金所で敵の襲撃に会い、あっという間に蜂の巣にされてしまう。カルロはわざとコニーを挑発し、ソニーをおびき寄せたのだった。

ソニーの死は、ファミリー全体に大きな悲しみと怒りを与えた。我が子が稼業の抗争で殺されてしまった、愛する妻の息子を死なせてしまった。誰よりも心を痛めたドンだったが「犯人は探すな、復讐はいかん、戦争は終わりだ」と言って、タッタリアとの手打ちを決め、葬儀屋のボナセーラを呼んだ。

 一方シチリア島。結婚後、しばしの平穏な時を過ごすマイケルの所にも、ソニーの死は知らされた。もはやここも危険だ。警戒し、アポロニアの身をも案じたマイケルの目の前で、車が爆発。マイケルの代わりにアポロニアが爆死してしまった。

 ドン・コルレオーネの招集で、五大ファミリーの会合が開かれる。バルジーニ、クネオ、タッタリア、ストラキら、各ファミリーのドンたちが出席した。

タッタリアやバルジーニたちは、ドン・コルレオーネと懇意の政治家たちが目当てで、彼らの保護を受けて麻薬ビジネスを展開したい。これに対しコルレオーネは「賭博や酒、女はいいが、麻薬は危険だ」と考えるが、「時代が変わった」とタッタリアは言う。他のドンからは「確かに麻薬は金になるが、青少年に売ってはいけない、悪魔の仕業だ」という意見も出た。

話し合いの結果、政治家を分かち合い、麻薬は条件付きで認める。コルレオーネは保護を分け与えて、この「戦争」は終わり、となった。

最後にコルレオーネは「お互い復讐はやめよう」として、自分の末息子マイケルの安全を約束させる。ソロッツォ殺しで国を追われている息子に万一何かあったら、例え事故にあっても、雷に打たれても、その時はここの誰かを憎む。そうならない限りこの平和協定を破ることはない、と約束した。

 帰りの車中でドンは言った。「今日分かった。バルジー二が黒幕だ。」

今日ですべて片を付ける


 平和協定が結ばれ、シチリアから戻ったマイケルはケイと再会する。お父さんのようにはならないって言ったわよね、と言うケイに、権力のある者には責任がある、と返すマイケル。この時のマイケルは、今後自分がコルレオーネのファミリービジネスを指揮することになるだろうと、跡継ぎとしての使命感を感じていた。但し自分がやるからには合法ビジネスだ。そして「子供を持つ事が大切だ」と改めてケイにプロポーズする。

 数年が経ち、バルジー二はますます勢力を伸ばしてきている。ヴィトーはボスの座をマイケルに明け渡していた。古参のクレメンザとテシオはそれぞれのファミリーを持って独立したいと考えるが、マイケルは拠点をラスベガスに移す構想を打ち出している。独立はその後だ。更に、ネバダ育ちのカルロはマイケルの右腕に、トムは相談役をやめてベガスで弁護士に、パパが相談役になる、とマイケルの人事が発表される。次男のフレドは一足先にカジノビジネスを学ぶためにラスベガスへ渡っている。もちろん合法カジノだ。マイケル・コルレオーネの思い描く城が少しずつ築かれようとしていた。相談役を外されたトムは納得がいかないが、それはマイケルとヴィトーで決めたことだ。

 カジノビジネスの大物モー・グリーンと会うため、マイケルはラスベガスへ渡った。フレドがベガスのショーバンドや女たちを用意して久々に会う弟をもてなした。しかしマイケルは、仕事で来たんだとバンドと女を追い出す。フレドとは対照的な、マイケルの硬派な性質がうかがえる。さっそくモーが持つカジノとホテルを丸ごと買い取らせろと一方的に切り出す。交渉というか、もはや脅迫に近い。長年カジノビジネスでやって来たモーが、そんな唐突な話を聞き入れるわけもない。モーからすればマイケルなんてド素人の青二才だ。コルレオーネは終わってると侮辱し、フレドの仕事ぶりにもケチをつける。そんなモーに媚びるような態度のフレドのこともマイケルは気に入らない。交渉は一旦決裂。フレドに対しては「二度とファミリーに立てつくやつの肩を持つな」と冷徹に言い放つマイケルだった。

 ヴィトーは隠居後もマイケルやファミリーの心配をし、マイケルの命を狙うバルジーニ勢力の拡大に気を抜くことができないでいる。今までどんな大物にも踊らされることもなく、裏社会で生きてきた。自分の生き方に悔いはない。そして自分の跡目はソニーが継ぐと思ってた。マイケルは議員や知事なんかになって、表に出て人を操るべきだ。もう永くは生きられないと悟って、マイケルに自分の思いを語る。「僕はそうなるよ、大丈夫」とマイケルは誓う。いくつになってもかわいい息子への心配は絶えない。そして最後に、「バルジーニとの会談の話を持ってくる奴が裏切り者だ、忘れるな」とヴィトーは言った。

 3歳になるマイケルの息子アンソニーとトマト畑で戯れるヴィトー。孫の前ではマフィアの大ボスとは思えない普通のおじいちゃんだ。そこで心臓発作を起こし、倒れて亡くなる。苦悩続きのヴィトーの人生は、ここであっけなく幕を閉じる。

 ヴィトーの葬儀は、墓地にて厳かに執り行われた。参列者は冒頭のコニーの結婚式と同じような顔ぶれで盛大なものだった。そこでテシオがバルジーニとの会談の話を持ち掛けてくる。ヴィトーの言葉に従えば、テシオが裏切り者だ。テシオはファミリーの最古参幹部であり、そもそもヴィトー、テシオ、クレメンザの三人でオリーブオイル会社を設立したのがファミリーの始まりだった。しかし彼もやはり、ヴィトー亡き後のコルレオーネはもはや終わったと悲観する者の一人だったのだ。

 コニーの子供の洗礼式で代理父(ゴッドファーザー)になるマイケルは、その日に照準を定め、五大ファミリーのボスたちと決着をつける計画を立てた。

 そして洗礼式の日、コルレオーネの兵隊たちが動き出し、教会では洗礼の儀式が粛々と進行する。

「神を信じるか」「信じます」。「悪魔を退けるか」「悪魔の仕業を、振る舞いを退けます」。甥のゴッドファーザーとなり、神父に誓うマイケル。

それと同時に、モー・グリーン、バルジーニ、タッタリア、他のファミリーのボスたちが、コルレオーネの兵隊によって次々に銃殺された。まるで誓いのとおり、神を味方に悪魔を裁く行為かのように。

「主とともに平和のあらんことを」。

 総仕上げは、テシオと、コニーの夫カルロの粛清だ。

「今日ですべて片を付ける」

裏切り者は絶対に生かしておかないというマイケルの徹底した冷徹さが本当に恐ろしい。

コニーは、兄であり息子の名づけ親でもあるマイケルに夫を殺された。発狂するのは当たり前だ。マフィアの家に生まれた女は、ファミリービジネスとは一切関わらなくても、いつも悲しい思いをさせられる。

そしてもう一人の女、マイケルの妻ケイもまた心を痛める。「本当に殺したの?」とマイケルに問うても、仕事に口を出すなと怒鳴られる。殺してないと否定されたが、この時にはもう二人の間に埋められない深い溝が立ちはだかっていた。

新たな「ドン・コルレオーネ」と呼ばれるようになったマイケルとケイの間のドアが、その深い溝を表すかのようにバタリと閉められた。     END

まとめ

 数ある映画の中でも、いつまでも色褪せることなく燦然と輝き続ける作品「ゴッドファーザー」。

 さて、マフィアの一家を描いただけの物語がなぜここまで名作として語られるのでしょうか。

まず、一度見ただけではその人間関係も含め、ちょっと分かりにくいところもあるので、何度か見直すべきであること、そして見れば見た分面白さが増すこと、説明不足の部分もよく見ているとちゃんと分かるようになっている脚本の素晴らしさなどがあると思います。そして俳優の演技、音楽の素晴らしさなどがそこに加わり、絶妙にまとまっているのです。

 上記のあらすじ文は、一度見てよく分からなかったけど、もう一回見ても分からなかったらやだなぁと、二度目の鑑賞を躊躇してるような方が読むとちょうどいいかな、という感じで書いてます。

 コルレオーネファミリーの繁栄と衰退をとおし、映画史上最も偉大な架空のキャラクターと評されるほどの人望厚いヴィトー・コルレオーネと、その跡目を継ぐことになった三男マイケル・コルレオーネの悲劇の物語。続くPART ⅡそしてPART Ⅲと、最後まで彼らの人生に目をそらさず向き合うことが、私たち映画好きの使命だと思います。 

 U‐next で鑑賞

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