作品データ
作品名:晩秋 ( Dad )
公開年:1989年(日本公開:1990年)
監督:ゲイリー・デイヴィッド・ゴールドバーグ
原作:ウィリアム・ワートン
出演:
- ジャック・レモン
- テッド・ダンソン
- キャシー・ベイカー
- ケヴィン・スペイシー
- イーサン・ホーク
上演時間:117分
製作国:アメリカ
ジャンル:ドラマ
画像出典:TMDb(The Movie Database)
ジャック・レモンが好きだ。
『お熱いのがお好き』や『アパートの鍵貸します』、そしてウォルター・マッソーとのコンビ。コミカルで、少し情けなくて、それでもチャーミング。
そんな彼が、今回は老いた父親を演じている。
久しぶりに観て、まず思った。
ああ、この眼差しは昔のままだな。
顔には歳月が刻まれている。でも、その目は昔のジャック・レモンのままだった。
昔は「そういうもの」だった
以前この映画を観た時の感想は、正直あまり覚えていない。
おそらく、親子愛や家族愛を描いた「温かい映画」として観ていたのだと思う。
親が年を取り、子どもが世話をする側になる。親子の立場が逆転し、親は少しずつ弱くなっていく。そして、いつかその死を受け止めなければならない。
そんなことも、「そういうものなんだな」と理解したと思う。
でもまだそれは、どこか他人事だった。
今は、他人事じゃない。
今は、当事者として観てしまう
今回は、完全に自分のこととして、その姿を見つめてしまった。
離れて暮らす親が病気になったり、介護が必要になったりした時、自分はどこまでできるのだろう。
仕事もある。自分の生活もある。
それでも、この映画の息子は仕事を休み、両親に寄り添うことを選ぶ。これは、本当に凄いことだと思う。
なかなか簡単にできることじゃない。
そして、この映画でいいなと思ったのは、父親がただ「世話をされる存在」になっていないことだ。
お母さんが倒れたことで、それまで身の回りのことをしてもらっていたお父さんは、自分でやらなくてはいけなくなる。
息子も「俺が全部やってあげる」ではなく、一緒に覚えて、一緒に生活を立て直していく。
料理や家事だけじゃない。
外に連れ出したり、車の免許を取り直したり。
その後、病気が見つかり、鬱にもなり、統合失調症も出てくる。そのたびに状態が変わっていく。
それでも、そこにはちゃんと「生きている時間」がある。
父親と息子が、一緒に新しい生活を作っていくのだ。
『ファーザー』を思い出した
この映画を観ていて、アンソニー・ホプキンスの『ファーザー』を思い出した。
どちらも「老いた親」と「世話をする子ども」が軸にあるから、見始めた時点では同じ方向の映画に見える。
でも、『晩秋』は「弱っていく父親」の映画、というだけではない。
『ファーザー』は、観ている側までアンソニー・ホプキンス演じる父親の世界に放り込まれて、何が現実なのか分からなくなっていく。
あのやるせなさは凄まじい。
一方、『晩秋』には、もちろん病気や死という厳しい現実がある。
でも、父親と息子が一緒に過ごした時間そのものに、ちゃんと温度がある。
同じようなところから始まって、全然違う。
どちらも、人生の終盤を見つめた映画なのだ。
それでも、最後は優しい
『晩秋』では、最後に父親が亡くなる。
もちろん、切ない。
今回の私は、昔よりずっとその死が辛かった。
以前なら、
「親が老いて、やがて死ぬ。そういうものだ」
と理解していたのかもしれない。
でも今は、そのことが自分の胸に直接入ってくる。
親が弱くなっていくこと。
子どもが親の世話をするようになること。
そして、いつか別れなければならないこと。
頭で分かっていたことが、今回は「自分のこと」に近づいていた。
だから、切なかった。
辛かった。
それでも、この映画は最後に優しい気持ちを残してくれる。
父親の葬儀に集まった人たち。
そこには、温かなつながりがある。
お父さんが生きている間に周囲へ与えてきた優しさが、今度はその人たちをつないでいるのだ。
人は死んでも、その人が誰かに与えたものまで消えるわけではない。
一緒に過ごした時間や、受け取った優しさ、残された思い出は、その人たちの中に残っていく。
だから、最後は悲しさだけでは終わらない。
「ああ、この人はちゃんと人の中に残っているんだな」
そんな優しい気持ちになれる。
同じ映画でも、自分が変われば
久しぶりに観た『晩秋』は、昔より切なく、辛く、考えさせられた。
でも、最後にはちゃんと温かかった。
同じ映画でも、自分の立っている場所が変わると、こんなにも見え方が変わるものなのだ。
そして、ジャック・レモンのあの眼差しは、歳を重ねてもやっぱりチャーミングだった。
やっぱり、好きだなぁ、
ジャック・レモン。
『ファーザー』が刺さった人には、ぜひこちらも観てほしい。
同じ「人生の終盤」を見つめながら、まったく違う場所へ連れていってくれる映画だと思う。
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