『トイ・ストーリー』シリーズは、勇敢なおもちゃたちの冒険と熱い団結を描きつつ、実は人と人とのつながりという普遍的なテーマを温かく描き続けてきた作品だ。
今回は、おもちゃの世界でも避けて通ることのできない「デジタル化」という現代的なテーマを扱っている。
ゲーム機やタブレット、AI・・・。
子供たちの遊び方は、この30年で大きく変わった。そんな時代に、おもちゃたちはどう存在意義を見出すのか。
これは『トイストーリー』シリーズなら、必ず向き合わなければならないテーマだった。むしろこれは遅すぎるくらいだ。
しかし、本作が本当に描きたかったのは、「アナログ vs デジタル」そのものの話ではなく、「人と人との関わり方」がテーマだったように思う。
友達ができず、一人でおもちゃ遊びをしていたボニー。そんな娘を心配した両親は、「リリーパッド」というタブレット端末をプレゼントする。
チャットやゲームを通しての「友達」は出来たが、些細なことでまたその友達との距離も生まれる。
誰が悪いわけでもない。親も子も、お互いを思っているからこそ生まれるすれ違いがあるし、デジタル機器が悪いわけでもなく、それらは本来便利な道具だ。
しかしネットだけで繋がった友達に温もりを求めることは難しい。
分かりきったことだが、それが現代らしいリアリティを持って描かれていた。
つまり今回は、「おもちゃの映画」から一歩進んで、子供がどう成長し、その成長を親がどう受け止めるのか、という人間側のドラマにも重心を移した。
おもちゃは、ずっと変わらない。
見返りを求めない。
遊ばれなくなっても主人を思い続ける。
子供は成長し、親は悩み、友達との距離も変わる。
その対比があるから、おもちゃの存在がまた温かく感じられる。
本作は特に、「おもちゃと子供」「子供と子供」そして「子供と親」それぞれの関係まで丁寧に描かれ、より奥行きが増していたと思う。
そんな中で印象的だったのが、ジェシーの「遊びとゲームは別物よ」という言葉だ。
ゲームを否定しているのではない。
想像力を共有し、相手を思いやり、一緒に物語を作り上げていく「遊び」の価値を、この作品は改めて見つめ直していたのだと思う。
ジェシーたちは、ボニーと、かつて自分が暮らしていた家に住む少女ブレイズを引き合わせようと試みる。ブレイズは、おもちゃであるジェシーが見そめた今時珍しい「遊び」を知る子供だ。
おもちゃたちの血の滲むような努力😆の甲斐あって、二人は友達になり一緒に ごっこ遊び を始める。そこへ近所の双子も加わって、友達の輪が広がっていく。
その結末は、おもちゃたちが世界を救ったという大袈裟な話ではなく、人と人が繋がり、おもちゃと子供とのつながりも再び取り戻したからこそ訪れた、温かなハッピーエンドだった。
そして今回、何より胸を打たれたのは、「デジタル化」の話より軸となったジェシーの物語だ。
『トイ・ストーリー2』で描かれた、かつての持ち主 エミリー との別れ。
子供は成長し、おもちゃはいつか置いていかれる、という避けられない運命。
あの時は「捨てられた悲しみ」とともに「愛されていた時間が終わった悲しみ」が押し寄せ、おもちゃの悲哀を感じざるを得なかった。おもちゃはそれでも、健気に次の人生(おもちゃ生?)を受け入れるのだろうと。
しかし、あの切ないエピソードが、20年以上の時を経てしっかり回収される。
大人になったエミリーが、自分の娘に「ジェシー」と名付けていたことが分かった瞬間、「ああ、ジェシーはちゃんと愛されていたんだ」と涙が込み上げた。
ジェシーの20年以上にわたる物語の決着に、心を動かされた。
おもちゃにとっては最高の答えだ。おもちゃ冥利に尽きるってやつだ。
遊ばれなくなることと、忘れられることは違う。
おもちゃたちは、どれだけ時が経っても持ち主を愛し続けるという描写。
それは創作だからこそ描ける世界だが、その姿は、おもちゃを愛した子どもたち自身の心を映す鏡でもあるのだと思う。
『トイストーリー』に登場するおもちゃたちが、子供たちを愛し見守る姿は、まさに子供がおもちゃを愛する気持ちを投影しているのだ。
私たちは大人になった今なお、かつて大切にしていたおもちゃを思い出すことができる。おもちゃは手放され、押し入れに入り、誰かに譲られるが、愛された記憶は消えない。つまり、子供がお気に入りのおもちゃを愛した記憶は、手放してもなお消えないのだ。
ラストでは、庭のおもちゃ小屋でブレイズを待ち続けていた古いおもちゃたちにも、新しい希望が生まれることを想像させてくれる。その先には、ボニーやブレイズだけでなく、たくさんの子どもたちの笑顔が待っているのだろう。
『トイ・ストーリー5』は、単にデジタル時代のおもちゃを描いた映画ではなかった。
時代が変わっても、子供は誰かや何かと「遊ぶ」ことをとおして、誰かを思い、誰かとつながり、その記憶を胸に生きていく。
おもちゃたちは、その変わらない想いをずっと見続けてきた。
おもちゃは、子供の鏡。
だから彼らが子供を愛し続ける姿は、子供がおもちゃを愛した記憶そのものなのだ。
それこそが、『トイ・ストーリー』シリーズが30年近く描き続けてきた、変わることのないテーマなのだと思う。