ドラマ・コメディ

『マイ・インターン(2015年)』――こんな70歳になりたい! 誰かとの出会いが人生を豊かにする

  作品データ

作品名:マイ・インターン(The Intern)

公開年:2015年

監督:ナンシー・マイヤーズ

脚本:ナンシー・マイヤーズ         

出演:   

  • ロバート・デ・ニーロ
  • アン・ハサウェイ

上演時間:121分

製作国:アメリカ

ジャンル:ドラマ・コメディ

画像出典:TMDb(The Movie Database)

驚くほど優しい世界

『マイ・インターン』は、驚くほど優しい世界の物語だ。

不自然なくらい悪い人がいない。

長年映画を観てきた者としては、「ここで対立が起きるはず」「誰かが裏切るはず」と、つい邪推が始まる。

お仕事ドラマなら、価値観の衝突や挫折、失敗、足の引っ張り合いが描かれることも多い。

ところが、この映画では、そういう展開がほとんど起こらない。

若者は70歳の新人インターンを温かく迎え入れ、上司も部下も互いを尊重し合う。

トラブルといえば、ジュールズが母親に毒メールを誤送信してしまったことや、夫の浮気をベンが目撃してしまうことくらい。

もちろん、ジュールズは仕事にも家庭にも悩みを抱えている。それでも、誰かが悪意を持って彼女を陥れようとするわけではない。

この映画の世界は、みんなが驚くほど優しいのだ。

こんな70歳になりたい!

ロバート・デ・ニーロ演じるベンは、まさに理想の人生の先輩。

穏やかで誠実。押しつけがましさがなく、相手の話を聞き、必要なときにはさりげなく手を差し伸べる。誰からも信頼され、どこへ行っても自然と周囲に人が集まってくる。

失敗しない。間違えない。人間関係もそつなくこなす。

完璧すぎるでしょう!

SNSやパソコン周りには少し弱いけれど、若者たちは親切に教えてくれる。ベンもそれを素直に受け入れる。

年齢を理由に新しいものを拒絶することもなければ、人生経験を振りかざして若者に説教することもない。

デ・ニーロといえば、私の中ではマフィアか狂人のイメージが強い(笑)。

『ミート・ザ・ペアレンツ』や『アナライズ・ミー』のようなコメディでも魅力を発揮する俳優だから、ベンの役にも違和感はない。むしろ、人生をたくさん経験して肩の力が抜けた人の自然体が、とてもよく似合っている。

こんな70歳になれたらいいなあ。

いや、なれるものなら、ぜひなりたい。

完璧ではないジュールズに惹かれたベン

一方、アン・ハサウェイ演じるジュールズは、完璧なキャリアウーマンではない。

自宅でファッション商品の紹介を始めたことがビジネスになり、わずか一年半で220人もの社員を抱える会社に成長した。

ものすごい勢いだ。

しかし、会社が急成長したからといって、経営者としての経験が十分に備わっているわけではない。仕事は忙しく、家庭との両立にも悩み、会社の将来についても決断を迫られる。

そんな彼女を見て、ベンは何を思ったのだろう。

ジュールズは、何でもそつなくこなす完璧な社長ではない。むしろ、走りながら考え、迷いながら進んでいる人だ。

それでも、彼女は自分の仕事に真剣で、お客様に誠実であろうとする。その姿勢と可能性に、人生の先輩であるベンは心を打たれる。

そして、「この人を支えたい」と思うようになる。

ここが、この映画の素敵なところだ。

ベンがジュールズに何かを教えてあげようと、上から目線で近づくわけではない。彼女の仕事ぶりや人柄に惹かれ、自然と力になりたいと思うのだ。

二人の関係が深まっていく過程も、驚くほどスムーズ。

映画好きとしては、もう少し揉めてもいいんじゃないかと思うけれど(笑)、この作品では、相手を理解しようとする気持ちが、二人の距離を縮めていく。

出会いは、人生の見え方を変える

ベンは、ジュールズにとって、仕事の悩みを相談できる相手であり、人生の先輩でもある。

けれど、彼が彼女に与えるものは、仕事のアドバイスだけではない。

誰かに頼ること。自分ひとりですべてを背負わなくてもいいこと。そして、経験を重ねた人の知恵や落ち着きが、自分の力になること。

ジュールズは、ベンとの出会いを通して、少しずつ自分の周りにあるものを見直していく。

そしてベンにとっても、ジュールズとの出会いは新しい人生の一部になる。

仕事を引退したからといって、人生が終わるわけではない。誰かと出会い、誰かの役に立ち、新しい場所で自分の居場所を見つけることができる。

70歳になっても、人との出会いには意味がある。

いや、70歳だからこそ、若い人にはない経験を生かして支えられることもあるのだろう。

年齢も立場も違う二人が出会い、互いを認め合う。

この映画が描いているのは、そんな関係の豊かさだと思う。

たまには、こんな優しい映画もいい

はっきり言って、物語としては少し物足りなさもある。

もっと大きな葛藤や衝突があってもよさそうだし、会社の急成長に伴う問題だって、もっと複雑になりそうなものだ。

登場人物はみんな素敵で、ベンは完璧。物事は驚くほど都合よく進んでいく。

それでも、最後まで心地よく観られる。

なぜなら、この映画は「もし誰もが少しずつ相手を思いやれたら」という理想の世界を描いているからだ。

現実は、こんなにうまくはいかないかもしれない。

それでも、誰かに少し優しくしてみよう。年齢を言い訳にせず、新しいことに挑戦してみよう。困ったときには、誰かを頼ってみよう。

そんな前向きな気持ちにさせてくれる。

登場人物全員が素敵で、心が温かくなる。

悪人がいなくても、映画は成立するのだ。

たまには、こういうのもいい。

人との出会いは、ときに人生の進む方向を変える。

自分ひとりでは気づかなかったことを教えてくれたり、忘れていた自分の力を思い出させてくれたりする。

『マイ・インターン』のベンとジュールズも、そんな出会いをした二人だ。

人生の先輩だから教えられることがある。若いからこそ与えられる刺激もある。そして、相手を尊重する気持ちがあれば、年齢や立場を超えて、互いに支え合うことができる。

この棚の本

  • ロッキー
  • ターミネーター2
  • オーロラの彼方へ

映画は、誰かとの出会いが、人生を豊かにしてくれることを教えてくれる。

そんな一本に出会えたなら、私はこの図書館に並べていきたい。

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